エピジェネティクスの分野は、発生・分化などの生命現象から老化・疾患に至るまで、とても幅広い現象を対象としています。また、DNAの分子レベルから、染色体の核内空間配置にまで及んでいます。さらに、個々人の違いすらエピジェネティクスで説明されようとしています。このように、エピジェネティクス研究は膨大な対象を扱っていますが、その根源として重要なのは、エピジェネティック機構は細胞の記憶システムであるという事実です。細胞はエピジェネティック機構を利用して、外的・内的なシグナルに応じて細胞の性質を変えつつも、一度運命が決まれば、安定してアイデンティティを保っているのです。しかしながら、どのようなシグナルがどのように認識され、どのような影響を与えているのかは、ほとんどわかっておりません。特に化学物質による影響を知ることは、疾患の理解・予防のみならず、全ての生命を守ることに繋がるのは間違いありません。
現在のエピジェネティクス研究は、一部の対象に集中している傾向にあります。様々な分野の研究者が参画する本研究会が、より大局的な視点から、エピジェネティクスの根源の理解の一躍を担うことを切望いたします。
2022年5月 EEG代表幹事・
国立がん研究センター研究所エピゲノム解析分野(当時)
現 群馬大学 生体調節研究所
服部奈緒子
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